file.12『西から来た夢追いの人』
夢見る者達の最後の箱舟。
幻想郷。
夢を虚言と割り切れない人生の
もしかしたらをきっとそうだと信じれる者達。
現実に白昼夢を干渉させる者達。
幻想を追い求める者達。
彼等の集う、最後の砦。
辺郷。
始まりは辺境に来た一人の少女だった。
こんな辺境に一体何の目的が?
―――少女は語る。
幻想郷を探しに来た―――。
幻想郷に往きなさい―――これは少女の伯父が遺した最後の言葉だった。
この言葉一つを残し、伯父は少女の前から消えてしまった。
その日から少女は"幻想郷"について篭りきりで調べ始めた。
世界の歴史文献、文化書物を読み始めてから早数年。
果てに魔術、結界の書に手を出す頃に
東の国の郷土歴史書に唯一の手ががりを掴んだのだった。
彼女は―――
後に初代"
"昨日見た夢"、"明日の君"、"白昼夢"など数々の二つ名を残す。
少女が紡いだのだ。
時間の止まった日記に
最初の第一項を刻んだのは。
考えてみれば
辺郷とは
後に彼女の下に集まる少年少女達の
想いが萃まり世界になっただけの幻想の産物なのかもしれない。
大気に還ってしまわないように彼女達を器とし
もしかしたら…きっとそうだと想うには
それはちょっと夢が無さ過ぎる。
2005, 10/14