file.6『ガーネットキャッスル、又の名をブルボンパレス』
むかし、ある辺境にお城がありました。
いつの時代に、何の目的で造られたのかも判らないお城でしたが
存在が公ではなかったことからそれは変わった城主が住んでいたのでしょう。
やがて存在の無いお城からは人が消え、
なかば廃墟に成りかけたところに今度は悪魔が住み着きました。
特別邪悪な悪魔というわけでもなく、お城は新しい城主を迎える事になりました。
その一風変わった新しい城主はその変わった造りのお城を大変気に入りました。
先代の城主のこだわりでしょうか、その悪魔とも大変気が合ったようです。
その悪魔は配下の下僕達と悠久なる時間をそこで静かに過ごす筈でした。
………
しかし、いつしか人々に悪魔の住む城がまことしやかに囁かれ始めた頃、
一人の悪魔退治の青年がついに悪魔の城を見つけました。
青年は悪魔を人に害を為すものと一方的に悪魔の城へ討伐に向かいました。
しかし悪魔は争いを好まず、なんとか和解しようと努めました。
しかし、ことごとく決裂。悪魔もむざむざ滅ぼされるわけにはいかないので
何度も青年を追い返しました。
やがて悪魔は次第に眼を失い、腕を失い、心臓を失い、
遂には八度目の遠征で打ち倒されてしまいました。
お城の悪魔が滅ぼされてから間も無くして、
悪魔退治の青年は急病で死んでしまいました。
それから変わったお城は何世紀にも亘り幾度もその城主を変え、
その度に変わった物語を紡ぎました。
今ではお城は館へとその規模を縮小し、
お城の敷地だったところは一面の畑が広がっています。
今その館の主もまた一風変わった悪魔が住んでいるのですが
お城のお話は既に終わっています。
2005, 6/21